リフォーム業界の集客に必要な「3C分析」とは?
これから、人口やファミリー世帯が減少していくと予測されています。資材高や人手不足も深刻で、日本の住宅業界に吹き付ける強い向かい風はやむめどが立ちません。
そんな状況でも、大手は海外に進出して事業拡大を図れるからまだいいでしょう。一方、中小のリフォーム会社は海外に打って出られず、廃業を余儀なくされる会社も出ています。
さて、こんなご時世に中小のリフォーム会社はどうすればいいのでしょうか。本稿では、それを考えるうえで役に立つ「3C分析」をご紹介します。
リフォーム業界の集客に必要な3C分析とは
さっそく、3C分析の概要からご紹介しましょう。
3C分析とは
3C分析は、ビジネス環境を分析するための手法(フレームワーク)のひとつです。外部環境と内部環境の分析を組み合わせ、ビジネスチャンスを発見するために利用します。
3C分析は、ビジネス・ブレークスルー大学学長の大前研一氏が著書『The Mind of the Strategist (1982年刊行)』で提唱して、広まりました。古典的な分析手法ですが、いまだに有用で活用されています。
なお、3Cは以下の3つを指します。
- 市場(customer)
- 競合(competitor)
- 自社(company)
このうち「市場」と「競合」が外部環境で「自社」が内部環境になります。この3つの情報を洗い出すことで、自社の強みや弱みを抽出し、競合と比べた際の優位性(USP)を見つけ出すのです。
分析の順序
3C分析は、以下の順序でおこないます。
- 市場やお客さまの情報を把握する
- 競合他社の情報を把握する
- 自社について分析する
一番手を付けやすい「自社」の分析を最初にやりがちですが、正解は「市場 ⇒ 競合他社 ⇒ 自社」の順です。自社を先に分析すると、戦う場所もライバルも考慮しない、視野の狭い分析結果を導き出してしまいます。
孫子も「彼を知り己を知れば百戦殆うからず」と言っています。まず、市場やお客さま、競合他社の情報をかき集めましょう。
そこから、事業を成功させるための成功要因(KSF)を見つけ出します。KSFが見つかれば、事業の成功にむけてやるべきことが見えてくるでしょう。それをふまえて、以下も実行してください。
- 市場と競合の分析を経て、他社が真似しづらい「自社の強み」を見つけ出す
- その強みを喜んでくれる「顧客層」をターゲットとする
- ターゲットから選ばれるうえで障害になる「自社の弱み」を解消する
準備が整えば、あとはターゲットにむけてアピールすればOKです。「あなたが求めているのは、こんなリフォーム会社では?それなら、ここにあります」と教えてあげましょう。
なお、以下のとおり、市場・競合・自社はお互い関連しています。関連の様相は、市場の変化によって変わることもあります。
- 「自社の弱み」は、競合他社との比較でわかる
- 「他社にない強み」も、競合他社との比較で決まる
- 市場においてニーズがなければ強みを生かせない
つまり、市場・競合の情報を集めて自社の分析をする工程を何度も回すほど、御社が今やるべきことが明確になっていきます。
3Cを使って分析する際のポイント
つづいて、3C分析のポイントをご紹介します。大事なことは、客観的な事実を集めること。「事実」と「解釈・仮説・推測」を区別することです。
また、自分で体験をともないながら情報を集めることも重要です。インターネット上の情報を集めて満足してしまう方が多いですが、市場の実相やお客さまの生の声に触れることが大切です。
机上の調査だけで済ますか、生きた情報を豊富に集めるか。この違いが、戦略の成否に直結するとお考えください。
では、市場・競合・自社、それぞれの分析の際のポイントをご説明します。
市場(customer)分析のポイント
最初に情報を洗い出すのは「市場」です。近年の営業活動はお客さま視点が必要不可欠で、目の前の市場やお客さまのことを理解しないと、自社のやるべきことが見えてきません。
市場の分析に必要なのは、市場規模と潜在顧客に関する情報です。この情報を明らかにして、顧客のKBF(重要購買決定要因)を特定します。
- 市場規模:業界の市場動向、市場の成長性やニーズ、潜在顧客の数や地域構成など
- 潜在顧客:顧客の特徴、顧客ニーズ、意思決定者、意思決定の流れなど
たとえば、リフォーム業界は今後どうなりそうでしょうか。どんなリフォーム分野が成長しそうでしょうか。商圏内に潜在顧客がどのくらいいそうでしょうか。
自社のサービスを利用してくれる可能性が高いのはどんな人でしょうか。どんな流れで利用に至るのでしょうか。どんなニーズがあるでしょうか。リフォーム会社選びの意思決定者はどんな人でしょうか。
市場規模の分析には、マクロ的な視点とミクロ的な視点が必要です。
マクロ的な視点で情報を集める際は、政治や経済、社会など大きな枠組みの観点から収集します。具体的な情報収集作業に落とし込む際は、PEST分析が役に立ちます。
「PEST」は、4つの外部環境の頭文字を取ったものです。ある企業には機会となり、別の企業には脅威となり得るものです。
- Politics (政治):法改正、規制緩和、税制、助成事業など
- Economy (経済):景気動向、為替や金利の動向、資材価格の動向など
- Society (社会):少子高齢化、トレンド、コト志向、SDGsなど
- Technology (技術):技術革新、DX・ICTの進展、AI・IoTの浸透など
上述の環境は、自社の意向でコントロールできません。とは言え無視できませんので、自社への影響を把握して、自社の戦略を合わせる必要があります。
一方、ミクロ的な視点で情報を集める際は「5フォース分析」等を活用して、自社を取り巻く業界内の脅威を明らかにするとよいでしょう。5フォースとは、以下の5つの脅威を指します。
- 競合企業:既に存在している企業の競合度合い
- 新規参入企業:新たに参入してくる可能性のある企業の強さ
- 代替品:自社サービスに代わる新しい商品となり得るもの
- 売り手の交渉力:材料提供者の交渉力
- 買い手の交渉力:自社がターゲットとしている顧客の交渉力
参考:
住宅リフォーム業界のファイブフォース分析:競争環境を理解し、戦略を最適化する方法
潜在顧客の情報も、ミクロ的な視点で収集しておきましょう。
ニーズの把握:どういったサービスを望んでいるのか等
購買プロセス:どういった流れでどのくらい時間をかけて契約に至るか等
購買特性:品質・性能を優先するのか、価格を優先するのか等
情報が集まったら、市場規模の情報収集で得た知見と潜在顧客の情報収集で得た知見をかけ合わせ、顧客のKBF(重要購買決定要因)を特定します。
競合(competitor)分析のポイント
競合の情報を収集する際は、まず「競合他社」を定義します。同じ市場で、同じサービスを提供する会社だけでいいのか?新築は競合にならないのか? DIY勢御用達の会社はどうか?等、検討しながら定義してください。
競合他社や競争状況について把握する際は、定量的(数字で表せるもの)な情報と定性的(数字で表せないもの)な情報を使います。定量的な情報には、以下のようなものがあります。
- 売上
- 利益率
- 受注数
- 市場シェア
- リソース(ヒト・モノ・カネ)
定性的な情報には、以下のようなものがあります。
- 戦略
- 理念・ビジョン
- 独自資源
- ブランド力
- 施工精度
- デザイン性
- 性能・品質
- 強み・弱み
- 業界のポジション
- 市場や顧客の変化への反応度
競合他社のこれらの情報は集めるのが難しく、ある程度仮説や想定も必要になります。
現時点で成果が出ている競合他社のビジネスにも注目しましょう。成果や要因を把握しておくとよいでしょう。
- 成果:どんな成果が出ているのか、定量的な指標でチェック
- 要因:結果が出た背景を、定性的な指標でチェック
競合企業の成功の仕組みを明らかにして、成功要因を特定していく作業はとても大切です。優良他社の優れた部分から学び、自社のマーケティングに取り入れましょう。
このような手法は「ベンチマーク」と呼ばれます。建築業界にとって馴染みのある言葉ですね。盗用にならないように、法令を順守しながらベンチマークを進めてください。
自社(company)分析のポイント
市場と競合の情報が集まったら、次はいよいよ自社の分析です。競合他社と同様に、自社について定性的・定量的な情報を用いて把握していきます。
定性的・定量的な情報を洗い出したら、競合他社と比較しながら自社の強みや弱み、KSF(成功要因)を導き出します。自社の分析でじゅうぶんな知見が得られたら、自社のマーケティング戦略を立てていきましょう。
なお、自社を分析する際は、SWOT分析が役に立ちます。SWOT分析は会社内・会社外の環境を以下の4つの観点から分析します。
- Strength(強み)
- Weakness(弱み)
- Opportunity(機会)
- Threat(脅威)
具体的な分析作業をおこなう際は、列に強みと弱み、行に機会と脅威を配置した4象限の表を用いて「クロスSWOT分析」をおこないます。
- 強み×機会:ビジネスチャンスに対して、自社の強みをどう生かすか
- 強み×脅威:自社の強みを使って、脅威をどのように切り抜けていくか
- 弱み×機会:ビジネスチャンスを生かすために、自社に足りない部分をどう補強するか
- 弱み×脅威:脅威の影響を最小限にとどめるために、自社をどう補強するか
参考:
工務店・リフォーム会社必見!SWOT分析で自社の強みを経営戦略に生かす方法
なお、3つのC(市場・競合・自社)は独立しているものではなく、相互に影響し合っています。自社の分析が済んだら、改めて市場や競合の分析をおこなってみると、最初は気づかなかったことが見えてきます。
その知見もふまえて再度自社の分析をおこなっていただくと、より磨きのかかったマーケティング戦略を立案できるでしょう。
3C分析のための情報の集め方
さて、3C分析のための情報は、どのようにして集めればいいのでしょうか。
まずはインターネットを使うのが簡単でよいでしょう。調査会社に依頼してアンケートを実施したり、調査資料を購入したりするのもひとつの方法です。
先述のとおり、競合他社の情報は手に入りにくく、収集の難関になるでしょう。有用なのは、報道やIRなど。技術関係の情報であれば論文や特許申請が参考になります。お客さまからそれとなく聞くのも、有効です。
既存の分析事例を見るのも、作業を進めるうえで大いに参考になるでしょう。インターネットで探してみてください。
参考:JAS制度の3C分析事例
【まとめ】リフォーム業界の集客に必要な3C分析を活用するには?
3C分析は「一度やったら終わり」というものではありません。3C分析で収集する情報は鮮度が重要であり、近年は市場トレンドが目まぐるしく変化していますので、何度も見直すことが大切です。
定期的にアップデートしながら、最新の状態に更新しておきましょう。そうすることで今やるべきことが明確になり、有効な施策に集中できます。
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